アイスランドを代表する4人組のポストロックバンド、Sigur Rós(シガー•ロス)、2011年発表のライブアルバム「Inni」。
2008年のライブを最後に活動を休止した彼らの、ロンドンのアレクサンドラ・パレスの2夜連続公演から本作はライブを収録したCD2枚とDVD1枚の計3枚組の初のツアーを収録した音源となります。ライブCD目当てで買う人も多いと思いますので、結論から言ってしまいますが、本作は明らかに映像のほうが主役です。「DVD付き」などの表記は嘘です!!DVD映像に「2枚のCDがついでに付いて」いる感じが正しいでしょう(笑) 筆者も2008年の本作収録のほぼ一ヶ月前の東京公演を観ていたので、正直ある程度、ライブセットは予想出来ていました。また、その時の国際フォーラムのライブはヨンシーの喉の調子が悪くてあまり声が出てなかったのをバンドメンバーがコーラスで支えていたのを記憶しています。しかし、その時のイメージを本作の映像を観て、見事に裏切られました。
この「Inni」は、アーケードファイアなどのPVで有名なカナダ人の監督、ヴィンセント•モリセットが監督を手がけているので、また飛び道具的なインタラクティブな映像かと思っていたら、ほぼ全編ライブ映像は白黒でまんま映像自体で勝負してきました。ただ、本作の映像を大画面だったら1分も観ないうちに分かると思うのですが、デジタルともフィルムとも言えない独特のテクスチャーな感じが出ています。デジタルカメラで撮ったものを投影して、16ミリのフィルムで再撮影して、それを編集してデジタルメディアにするというなかなかにややこしいことをしています。また、投影する段階で物理的にエフェクトをかけたり、光の量を調整したりと、PC上で調整するのとは別のハンドメイドな感じを出すのに成功しています。
正直、金や時間をかければこれだけの映像を今は作れるのかと見とれていましたが、シガー•ロスというバンドのイメージを闇の中から浮かび上がらせるように、シャウトのところや轟音のところをやり過ぎなぐらいハイキーに飛ばしたりと、かなり自由にやっていて正直サイケな映像で80分のモノクロの映像なのに全く眠くならないです。90s初めのシューゲイザーバンドのPVをモノクロで観ているかのような錯覚を受けました。しかし、最後まで観るとそれらは完全に計算して作っているのが分かります。ノイズやブレ、白トビなどをかなりの部分でコントロールしています。まるで写真家の森山大道みたいとでも言えば良いでしょうか。全体的にボヤけてたり、ノイジーだったりしますが、監督がそのシーンで魅せたい部分は、指だったり、指板だったり、ハイハットだったり、汗だったりが部分的にクリアに像を結んでいるのです。全体がボヤけている時は音にフォーカスしていたりと緻密なまでに計算された画面です。カメラマンも言うまでもなく、一流の仕事ですね。
演奏自体もツアー後半と言う事もあり、かなりまとまっていて余裕すら感じさせます。また、サポートなしでメンバーの4人のみで演っていたツアーなので、今後を考えてもレアかもしれません。最後の観客が映るところで、やっと観客側に戻って来ることができます。アルバム「残響」の祝祭感を見事に現したライブ後半と前半の静かな部分の対比が見事です。シガー•ロスのファンはもちろんのこと、映像自体にも注目して欲しい極上のライブ音源です。
ベストトラック:♯1「Ný batterí」
オススメ度:★★★★★
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