英国を代表するバンドとなった4人組のアークティック•モンキーズ、2011年発表の4thアルバム「Suck It And See」。
プロデューサーは、前作に引き続きジェイムス•フォードが担当しました。正直、前作「Humbug 」はQOSTAの影響を受け過ぎで、まだまだこの人達は若いんだよなーなどと冷静に聴いていました。そもそも、アークティック•モンキーズの2006年発表のデビューアルバム自体は、アレックスの描く詞の日常性(同時代性)含めてかなりエポックメイキングな作品でした。しかし、その後の2枚のアルバムと言えば、そんなに注目されるべき作品なのか?とかなり疑問符がついていました。結局、アレックスの作る曲や詞ばかり注目を集めますが、リズム隊がしっかりしているから変拍子やあの偏ったアレンジが成立してたように思います。2nd、3rdとかはリズムが主役なんじゃないのか?と思うぐらいエネルギーを割かれているように思いました。 そして、早くも4thアルバムとなる「Suck It And See」はまさかの歌モノ。バンドが、完全に方針を変えたといっていいでしょう。今までの2枚がジャムから制作されていたのが、本作では曲を作ってからスタジオに入っているということなので、もう曲の制作段階から違います。最初に聴いた時は、ひさびさのド直球のロックンロールでちょっと面白かったです。まさか、ひねくれていることが売りのアークティック•モンキーズのアルバムで「ロックンロールしたい」(♯3「Brick By Brick」)とか聴けるとは思っていなかったので(笑)。今年発表のアルバムだとビーディ•アイとかも直球で勝負していましたが、原点回帰的な部分に流行が戻りつつあるのでしょうか。
本作は、アークティック•モンキーズ史上で今までで一番ポップなアルバムであり、ギターロックの甘酸っぱい部分を巧く抽出している名盤だと思いました。たぶん、昔からの熱烈なファンに賛否あるでしょうが、別にまくしたてるように歌わなくても、変なリズムじゃなくても良いじゃないですかw良いメロディとキラキラしたギターがあれば。ちなみに、声で分かると思いますが、♯3「Brick By Brick」はベースのマット•ヘルダースが初めてボーカルを担当しています。今後、バンドの転換となるアルバムとして振り返られると思います。
カサビアンやアークティック•モンキーズのデビューから二年経った頃、遅れてやってきた踊れるロックの本命的な扱いでデビューしていたのを覚えています。ちょっと市場的に飽和してダンスロックが終りかけの時期だったので正直かなり分が悪かったのですが、曲的には新人とは思えないぐらいよく書けていて、しかもどの曲もキャッチーです。最初からシンセを導入していてエレクトロポップな感じのフレーズが多いのも好感です。バンドの演りたいことがしっかりしている印象を受けます。音がバランス良く整然と並んでいて、ロックバンドとしてはちょっと綺麗すぎるようにも思えますが、これはこれでアリかと思いました。 とりあえず、この音源は冒頭の♯1「Pride Before The Fall」~♯3「Poisonous Emblem」の流れが圧巻です。フロアで踊っているキッズたちの盛り上がっている姿が見えるような分かりやすい跳ねるようなリズムのイントロは、もはや職人芸のように計算されているようです。ネットで試聴出来るような時代になって思う事は、やはりイントロの掴みが弱いバンドは聴かれないという鉄則を分かっていますよね。音もまだまだ若いですし、パワフルです。ダンスロックだとザ•ミュージックなどの大物バンドに隠れてしまい日本では知名度的に低いように思いますが、TheKBC、良いバンドなので是非興味をもったら試聴してみてください。
オクラホマ出身のUSサイケロックの大御所、ザ?フレーミング・リップス、1999年発表のアルバム「The Soft Bulletin」からの2ndシングル「Waitin'for A Superman」。
三曲入りですが、タイトルトラックである♯1「Waitin'for A Superman」はライブなどで数々のミュージシャンがカバーしていたります。相変わらずウェインのボーカルがヘロヘロなんだけど、哀愁が漂っていて、綺麗な鍵盤のフレーズと対照的で耳に残ります。 そのほかの二曲はアルバム「The Soft Bulletin」からではなく更に前の実験的な音源である「Zaireeka」からミックスして収録しています。Zaireekaは四枚組のアルバムで四枚が各8曲を収録して、四枚同時に再生しないと音の全貌が分からないという遊び心に溢れているのか、音楽的な実験なのかよく分からない音源でした。四枚のディスクを同時にかけなければならないので、プレイヤーも四台、スピーカーも同じだけ必要だったので聴けた人のほうが少ないでしょう。また、手動でやると音がズレて更にサイケになるのでw、バンドがどんな音を鳴らしていたのか初めて知る人も多いのではないのでしょうか。筆者もこの曲目当てで購入しましたし。音的には「Yoshimi Battles the Pink Robots」のスケール感を更にサイケにしたような感じで、実はかなり面白い試みだと思いました。「Zaireeka」を持っているリップスファンにもオススメです。
元バーガーナッズのフロントマンであり、Good Dog Happy Menのフロントマンでもある門田匡陽の2011年発表のソロデビューアルバム「Nobody Knows My Name」。
2000年代頭の下北沢界隈の鬱ロックシーンを牽引したバーガーナッズ、そして、ノンタイアップでカントリーやロック、ブルースなど多彩なジャンルを横断して口コミだけでかなりの動員を集めたGood Dog Happy Men。その二つのバンドの中心人物であるシンガーソングライター門田匡陽が本作でスタジオ音源としては初のデビューになります。 Good Dog Happy Menの後半(二人編成になってから)から導入したひさびの歪んだギターが炸裂するのかと思ったら、あまり歪んでもいなくポップな歌モノでちょっと肩すかしです。また、Good Dog Happy Menで様々なジャンルや童話的な詞への挑戦をしてきていましたが、それもなくなり、なんだか本当にソロっぽいというか、寂しい感じにwドラムに盟友伊藤大地や、ベースに金戸覚など一部豪華なゲストも呼ばれていますが、ほぼギター、ベース、シンセまで門田が1人で演奏している曲もあって、音がスカスカです。また、グルーヴ感もギター以外から感じられない演奏でかなりガッカリでした。得意のリヴァーヴのかかったアルペジオもフレーズ的に弱いですし。一番勢いがあったのはインストのジャムセッションっぽい♯9「後夜祭」ってのがどうかと思います。この曲ってGood Dog Happy Menでライブのみで何度も演られていましたから、ある意味構成が練られているからなんでしょうか。門田のワンマンバンドだと思われていた今までのバンドは、他のメンバーが大きく貢献していたことが逆に本作でかなり露になったような気がします。 その他で注目すべきは、バーガーナッズ時代に先祖帰りしたかのような♯6「埋立地」、♯7「Dear My Teacher」が古くからのファンは嬉しいかもしれません。
「Dear My Teacher 彼は病欠さ鬱病らしいよ Dear My Teacher クラスメート馬鹿ばっかりだよどうして?」(♯7「Dear My Teacher」)
ブライトンを中心に活動する二人のプロデューサーからなるSouthCentral(サウス•セントラル)、2011年発表の2ndアルバム「Society Of The Spectacle」。
プロディジーとペンデュラムのツアー・サ ポートに指名されて色々なところで名前を見ていたのですが、本作で初めて聴きました。いかにもなフロア仕様のビートときらびやかな音で非常に分かりやすい……ツアーサポートしていたバンドから想像できる範囲内というか更に分かりやすい感じのダンスロックです(笑) 正直目新しさといった意味では感動はないです。でも、アルバム一枚通しての安定感があります。本作が00年代の後半のニューレイヴの狂騒の中でリリースされていたら爆発的に売れていたであろうと思います。かなり思い切ってデジタル寄りにふっているのでその割り切り方が潔いです。今のシーンの流れを考えると人力だったりもう少し隙を作った方がウケる気もしますが、SouthCentralの美学を感じます。暴力的なビートで暴力への警鐘を鳴らした♯2「The Day I Die」はキラーチューンですね。
本作「Society Of The Spectacle」の日本語盤は、盛りだくさんでボーナストラック含めて16曲も収録しているので、そのテンションの高さに疲れる人も多いかと思いますwリスナーを選ぶアルバムですが、この手のジャンルとしては完成度は高いと思います。